改善しているのにちっともよくならない。
そんな方に対して、自動車メーカーで有名なトヨタ車が提唱した「なぜなぜ分析」について解説していきます。
人の暮らしを改善して良くする、1つ1つの業務を改善し無駄を省くなど、仕事は常に何かを改善して価値を生み出していくものです。
つまり、改善して問題を解消できる人こそ、仕事が出来る人と言えます。
改善して問題を解消するためには、改善の質とスピードその両方が重要です。
なぜなぜ分析は、この2つとも実現できる思考法と言えます。すべての人が知っておくべき内容です。今回は、例も踏まえて分かりやすくお伝えします。
なぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析とは問題の本質、つまり根本的な原因を見つけるための分析方法です。
方法自体は至って簡単で、問題に対して「なぜ」と繰り返し問うことによって探していきます。
なぜなぜ分析が特に力を発揮するケース
- 品質管理改善
- 労働・生産性の改善
- 収益分析
- マーケティングの集客分析
- 営業の受注率改善
- テストなど明確な目標がある場合
など、特に数値を用いたもの。売上を上げる・コストを下げるための足かせになっている問題に対して有効です。
トヨタ自動車は「なぜなぜ分析」を生み出せたからこそ世界企業になった
今では自動車業界で世界トップクラスの企業であるトヨタ自動車。
元々は、機織り機メーカーで日本の1つの企業に過ぎませんでした。しかも第二次世界大戦後は、アメリカと日本は技術も資本力も雲泥の差がありました。
そんな中から、世界に太刀打ちできるよう、低コストで高品質の自動車を作るために「トヨタ生産方式」というものを編み出し世界トップメーカーに躍り出ました。
この「トヨタ生産方式」で重要な考え方が「なぜなぜ分析」です。
実際使われていた考え方は、「ある問題を見つけたら、なぜを5回は繰り返して根本的な問題を「カイゼンする」というものです。今や世界でも「カイゼン」という言葉が使われますが、これもトヨタが広めたと言われています。
「なぜなぜ分析」は、別名「なぜなぜ5回」とも言われます。
このように、「なぜなぜ分析」を使いこなし徹底すれば、世界にも太刀打ちできる可能性があります。
トヨタ自動車のなぜなぜ分析の例
機会が動かなくなった場合の分析例です。
「トヨタ生産方式」というトヨタ自動車工業元副社長である大野耐一氏本が書いた本にて紹介されています。
このように、なぜを5回繰り返して問題の本質、根本の原因にたどり着いています。
原因は、ストレーナー(濾過器)がついおらず切粉が入ったからという結論に至りました。
もし1回しか「なぜ」を問わなければ、ヒューズを交換するだけで終わっていました。この場合は、根本の原因を解消していないので再びヒューズが切れることになります。
同じように2回・3回目で止まっていたら、同じ結果を繰り返すことになります。5回繰り返すからこそ問題の根本の原因にたどり着き、改善することが出来るのです。
ここで勘違いしてはいけないポイントは、「なぜ」を繰り返し問いて問題の根本の原因にたどり着くことです。
5回というのはあくまでも基準です。場合によっては10回かもしれませんし、3回程度かもしれません。
本質的には、これ以上掘り下げられない原因まで繰り返すという事です。
さて、なぜなぜ分析についてはご理解いただけましたでしょうか。ここからは実際に行う為のポイントをご紹介していきます。
なぜなぜ分析を実践で使うためには2つの段階がある。
- 何の何処が問題なのか、解決したい問題を見つける事
- なぜは改善できる根本原因を分析していく事
何の何処が問題なのか、解決したい問題を見つける事
なぜなぜ分析は、問題の本質・根本の原因を見つけることです。
しかし、そもそも何が問題なのかを見つけることはできません。
なぜなぜ分析をする前に、何が問題なのか何を解決したいのかを考えることが大切です。
解決したい問題を見つけるためには2つの順を踏んで考えましょう。
何が問題なのか
何が問題なのでしょうか。問題とはあるべき姿(理想)とのギャップです。
お客さんが50人しか来なかったという結果があった場合、
5席しかない飲食店で、1日50人きていたら問題ではないかもしれません。
100席ある飲食店で、1日50人しかきていない場合は、問題があるかもしれません。
どういう目標や理想があって、それに何が達していないのか考えることが大切です。
何処が問題なのかMECEでみる。
何が問題なのかが明確になったら、次はどこに問題があるかを考えましょう。
問題はどこにあるかを見つける際には、MECEで分けて、特に悪化している所・改善したいところを見つけます。
MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)とは、1つの問題に対してモレなくダブりなく因数分解することです。
例えば、会社で利益(売上―コスト)を増やすという課題があったとします。
その場合、下記の図のように分けることが出来ます。
- 売上:客数×客単価(1人当たりの売上額)
- コスト:変動費(材料費など日々変わるもの) + 固定費(家賃など定額の物)
このように分けることが出来ます。それぞれダブりがありません。また、モレもありません。
学校のテストなら、国語・算数・理科~のように教科別に分けられます。
国語のテストならば、読解問題・漢字の問題・慣用句の問題などジャンルごとに分けることもできます。
MECEに分解することが出来たら、この中でどこがネックになっているのかを考えます。
固定費が圧迫しているのであれば、なぜなぜ分析する課題は「なぜ固定費が圧迫しているのか」です。
客数が減っていれば、「なぜ客数が減っているのか」が課題になります。
このように、何が問題でどこに問題があるか明確にしましょう。明確になったらその部分に対して「なぜなぜ分析を行っていきます。
「なぜ」は改善できる根本原因を分析していく事
解決するべき課題・問題を見つけられたら、実際に「なぜ」を繰り返しといて問題の根本原因にたどり着きましょう。
「なぜ」を繰り返していくときに、注意しなければいけないポイントは3つです。
1.コントロールできる問題にすること
問題の原因が自分ではコントロールできない問題にしてしまうと、何も解決はできません。
例えば
- 世の中が悪い
- 政治が悪い
などです。
一方で、「〇〇が、眼が悪いからだめ」という問題の場合、一見コントロールできなさそうに見えますが、「眼が悪くても大丈夫な仕組みにすること」を検討できるので問題ありません。
「解決できない問題はない!」という反論もありそうで線引きが難しいですが、ポイントは問題解決することで費用対効果があるかどうかです。
「政治が悪い」という場合、良くするように自ら政治家になって~など出来るかもしれませんが、企業の売上悪化などの問題を解決するために政治家にまでなるのは費用対効果が悪く現実的ではないです。
2.抽象的・感情的にならない事
- 誰が悪い。
- 天気が悪いからだ。
- 根性が足りないからだ。
- 努力が足りないからだ。
のような、抽象的・感情的な答えは、解決に結びつき辛いです。
根性・努力に対して否定しているわけではなく、抽象的感情的が問題なのは、数値化し辛く改善できたとしても、その理由が特定できないためです。
3.複雑な答えにならない事
例えば「体調が悪く眠たかったから」のような答えは、
- 体調が悪かったからなのか
- 眠たかったからなのか
どちらに原因があるのか不明です。
答えが複数の解決要素を持っていたり、結局何が原因か分からない答えは、避けましょう。
ラーメン屋を例に「なぜなぜ分析」をしてみる。
あるラーメン屋で赤字。つまり利益がマイナスになっていて困っているとします。
今回の問題のありかは、客数が減ってしまっているからと仮定します。
MECEにすると、このような部分ですね。
なぜ客数が減っているのか「なぜなぜ分析」する
例で、少し都合がよくなっていますが、このように分析することで問題の根本にたどり着くことが出来ます。
なぜなぜ分析の失敗例
このように、なぜの回答が、コントロールできず、曖昧な内容の場合は、次の「なぜ」に繋がらず問題の根本原因にたどり着くことが出来ません。
この場合は、「競合が現れたのでしょうがない」と言った結果になってしまいかねません。
先ほどご紹介した注意すべきポイント3つを踏まえて分析していきましょう。
分析は「仮説思考」が大事
「なぜ」の答えは、どこかに書いてあるわけではありません。分析したうえで見つける必要があります。
何処から分析すればよいのか、何を分析したらよいのか分からなくなります。すべての事柄を分析していては物凄い時間を取られてしまいます。
そんな時は「仮説思考」が大事です。
もしかしたら、この辺りに原因があるのではと「あたり」を付けて、分析するようにしましょう。
成功した時、良い時にも「なぜなぜ分析」を行う事
なぜなぜ分析は、問題・解決すべき課題があるときに使う事が主な役割です。
しかし、成功した時にも「なぜなぜ分析」をしましょう。成功した時は、うれしさのあまり都合の良い解釈をして終わることが多いと思います。
成功した時こそ、何でその成功が出来たかを分析することによって、偶然だったのか・再現性があるのか考えることが出来、次につなげる事ができます。
「なぜなぜ分析」は成功した時・良い時にも行いましょう。
さいごに
- なぜなぜ分析は、問題の根本原因・要因を見つけることが出来る。
- なぜなぜ分析をする前に、問題のありかを見つけることが大事。
- なぜなぜ分析は、問題だけでなく成功した時の要因も分析すること