少子高齢化と言われて久しい今。
需要の拡大と人手不足で、労働環境は売り手市場です。 一方で、介護職=大変・キツイ・安月給というイメージがあると思います。
介護業界で働こうとしている方はもちろん、業界研究としても参考になると思います。
介護福祉業界とは?サービスの種類
身体が不自由な方や、高齢者で日常生活が困難な方に対し、介護を行うサービスです。
介護施設は、大きく分けて2種類あります。
- 介護を受ける側の家などにいく居宅のサービス。
- 介護受ける側が、介護事業所に行って介護を受ける、介護施設のサービス。
居宅サービス~訪問介護・看護など~
自宅に住みながらサービスを受けられるものです。
家で介護位も行える訪問サービス、送迎を行ってもらって介護を受ける通所サービス、一定の期間のみ入所する短期入所サービスがあります。
介護施設のサービス ~老人ホームなど~
介護老人福祉施設や、介護老人保健施設などいわゆる(老人ホーム)があります。 利用者を長期間受け入れるのが特徴です。通常の介護やレクリエーションなどのサービスを提供します。
主な施設。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
重要! 介護業界の収益。介護報酬とは
主な介護事業所の収益現は、介護報酬です。
介護保険制度に基づいたサービスを行う場合に、きまった報酬(介護報酬)を得ます。
介護報酬は、利用者が1部を負担し残りは、介護保険料、税金(国、県、市など)で支払います。 一般の方が病院の受診料が3割負担で済むのと同じような仕組みです。
介護報酬改定という言葉をニュースなどで聞いたことがあるかもしれません。
介護報酬の額は、基本的に3年に1度国が決めます。介護報酬が上がった下がった等報道されますが、具体的には身体介護・入浴介助などサービス内容(業務内容)によって異なります。内容によって上がるものがあれば、下がるものもあります。
昨今では、介護を受ける方が急速に増えているため、介護保険料は増え続けています。国としては歳出を抑える為、介護報酬を下げたいところもありますが、介護報酬は言わば介護事業所の売上です。
※因みに介護報酬が下がった時には、実際に事業所閉鎖になった事業所もあります。
民間企業は、介護報酬外の収益も
主に介護サービスは社会福祉法人という非営利組織がおこないます。
しかし、ニチイやベネッセなど株式会社の営利組織も事業を行っています。 営利目的で行われる会社の為、介護保険適用外のサービスを手厚くすることにより収益を上げています。代表する有料老人ホームなどは、他の老人ホームと比べ入居者の負担が大きくなります。
※営利目的だから、質が悪いなどはありません。むしろ営利企業のほうがサービスが高い可能性もあります。
介護業界の給与は?
平成30年度の厚生労働省の調査によると、介護職員の平均給与額は月給約30万円です。
昨年度より1万円アップしています。
介護の給与は、主に勤続年数と所持資格により変わります。
勤続年数でみる平均給与~平成30年度~
勤続年数 | 平均給与 |
---|---|
全体(平均勤続年数7.6年) | 300,970円 |
勤続1年~1年11カ月 | 270,740円 |
勤続2年~2年11カ月 | 278,550円 |
勤続3年~3年11カ月 | 282,700円 |
勤続4年~4年11カ月 | 284,300円 |
5年~9年 | 295,450円 |
10年以上 | 334,140円 |
所持資格別で見る、平均給与~平成30年度~
資格状況 | 平均給与 |
---|---|
全体 | 300,970円 |
保有資格あり(勤続平均7.7年) | 303,460円 |
介護福祉士(勤続平均8.4年) | 313,920円 |
実務者研修(勤続平均6.5年) | 288,060円 |
介護職員初任者研修(勤続6.8年) | 285,610円 |
保有資格なし(勤続平均5.2年) | 261,600円 |
介護職は、専門職です。資格を持っていれば実績となり、転職もスムーズに行え給与も一定の額で得られます。
有資格者で経験者であれば転職に困ることは、ほぼないでしょう。いろんな地域で働きたい方や、妻・夫が転勤族で一緒に引っ越す必要があるような場合は、オススメの職業とも言えます。
無資格は不利?介護業界の問題「配置基準」
人手不足でも、無資格の採用は厳しい状況です。
まず訪問系のサービスは、無資格では働くことができません。
働くことができる老人ホーム系でも、配置基準というものがあり、有資格者の従業員数に応じて受け入れられる入居者数がきまります。
逆に有資格者の従業員を集められないと入居者を受け入れられず施設閉鎖になる場合もあります。
事業所が売上を上げる為には、入居者数を増やす必要がある為、無資格では事業所にとって手助けにはなりますが売上を上げられません。さらに無資格で未経験の場合、教えなくてはならない為、いくら人手不足とはいえ採用が難しくなります。
介護職員初任者研修など初級資格(厳密には研修)は、難しい資格ではありません。もし転職を考えている方は、先にとっておいた方がよいでしょう。
介護は安月給なのか?
結論、高くはないが、物凄い安いわけでもないです。
表に記載の額だけを見ると他業種と比べ少ないですが、今の介護制度が始まったのが2000年からです。初期から働いていても勤続20年です。そのため平均勤続年数が7年強と少ないです。
また、働く方はパートなどが多い為、給与が高くない状況です。しかし、正社員同士で比べた場合でも上場企業と比べ劣ります。
さらに、給与を上げるための介護福祉士は、資格を取るまでに長い時間を要します。その分の目先のリターンは少ない印象です(主観です)。しかし、転職がしやすく国も待遇を上げようという方針なので長期的に見れば費用対効果がよいかも?しれません。
介護業界の未来は?主なトピック
様々な業種が参入してきている。
介護の需要は、人口構造上確実に増えていきます。その為、介護事業所だけでなく様々な業種が介護業界に参入してきています。
例えば、以下の通り
- 飲食業界が高齢の方でも喉を詰まらせる心配が少ない介護食に参入
- ソフトウェア企業が、介護の業務をサポートする介護ソフト。
- 最新技術では、 介護ロボ・ 介護を受ける人が徘徊を思想になったらアラートが出る見守り機器など
更には、車いす等、介護用具の需要も伸びています。これからも様々な企業が介護業界に進出していくでしょう。
日本の介護は世界トップクラス、海外から学びに来る人も
日本は世界から見て介護先進国と言われています。
他の国は日本ほど高齢化が進んでおらず、介護を必要とする人も少ない為、介護事業が発達していません。 しかし、これから高齢化社会を迎える可能性のある国も多い為、介護技術を世界に輸出しようとしています。
人材不足だけど、待遇改善や海外人材活用も?
2025年には、38万人の人材不足と言われています。
※ちなみにIT人材は2030年に同じく38万人不足するというデータもあります。
団塊の世代が介護になる可能性が高く需要が膨れ上がる一方、少子化などで供給が追い付かない為です。
需要に対しては、高齢者の方が介護の必要を少しでもなくせるよう、健康寿命を延ばすために介護予防を国が推進しています。 根本の人材不足については、2019年10月におこなった消費増税分を、介護福祉士の給与改善に充てて人手の確保を行うなどを行っています。
さらに、昨今世間で話題になった特定技能・外国人技能実習制度などの制度を活用し海外の方の働き手を求めています。
介護業界はまだまだ問題が多い。
生産性を上げ辛い
他業種では、テレワークやIT機器・ツール導入でどんどん生産性が上がっていきますが、介護業界の場合人と人とのつながりが重要です。例えば見守り機器は、利用者の安全を守るための見守り器具ですが、極端な見方をすれば盗撮・盗聴とも捉えられます。
生産性を上げる為のツール導入には、経営者・従業員・利用者・利用者の家族の4方の同意が必要になる為、なかなか機器の導入ができません。
そもそも、介護職員の多くはPC業務が苦手な方が多いのも、ITツールの導入が進んでいないのも現状です。
将来性はある
問題は多々ありますが、需要が増えていくことは確実で社会貢献性の高い業界です。国・企業それぞれがこの問題に立ち向かっています。
徐々に改善の方向に向かうことでしょう。