新規事業立ち上げというのは、夢があってとても楽しいものです。
私も、新規事業を複数立ち上げた経験がありますが、とてもやりがいのある仕事です。
しかし、事業が安定した収益を実現するための道のりは非常に難しいものです。
新規事業は「どのようにすれば成功する」というものはありません。
ただし「失敗しない方法」というものはあります。
それは失敗しかねない道を避けていく事です。
今回は、新規事業で失敗してしまう理由・ポイントを自戒の念を込めて解説します。
もし同じような方向に進んでいたら軌道修正して成功に近づけて頂けたらと思います。
最後には失敗を防ぐためのチェックリストがあります。ご活用ください。
なぜ新規事業は失敗しやすいのか。
新規事業の成功率は1割未満とも言われています。そのぐらい新規事業の成功は低いものです。
なぜ、そんなに成功確率が低いのか。
答えはシンプルで、2つあります。
- 既存事業拡大と新規事業立ち上げは求められるスキル(気持ち含め)が全く異なる。
- 新規事業立ち上げの経験が圧倒的にたりない。
新規事業を立ち上げるメンバーの多くは、今ある既存事業を拡大させていた人たちです。
既存事業の拡大とは、10を100にすること。1を10にすることです。
しかし新規事業は、まったくの0から1を生み出すものです。この差を理解できていない場合が多いです。
恋愛にたとえてみると以下のような感じです。
- 新規事業立ち上げ:彼女を作ること
- 既存事業拡大:今いる彼女をより幸せにすること
何方のほうが難しいという事ではなく、根本的なスキルが違います。恋愛の場合、イケメンで性格の悪い男がいたとしたら、新規事業自体は簡単かもしれません。 しかし、既存事業拡大は向いていない可能性があります。
多くの新規事業を立ち上げるメンバーは既存事業拡大で成功してきたメンバーですが、新規事業を立ち上げに適しているかどうかは別問題なのです。
既存事業拡大でも、最初は新入社員で何年も失敗・改善を繰り返していると思います。新規事業は1発勝負に近いです。そのため、成功が難しく失敗しやすいのです。
事業を成功に近づけるために、なぜ失敗するのかポイントを考えていきましょう。
新規事業で失敗する根本的な理由とは
事業の本質を理解していない
それぞれの業界・事業には、KSF(キーアクセスファクター)という「主要な成功要因」があります。
それを理解していないと事業はほぼ失敗すると言っても過言ではないです。
例えば、飲食店であれば「集客力のある、料理・メニュー」が必要です。「おいしいメニュー」ではありません。「集客力のあるメニュー」です。
めちゃくちゃおいしくても、誰も興味を示さなければ意味がありません。所説ありますが、トマトはおいしいのに昔の人は「毒」だと思い食べませんでした。このように興味を示さなければ意味がないのです。
しかし、新規事業を企画する時は「奇抜なメニュー」「兎に角おいしいメニュー」など集客度外視で、自分の作りたいメニュー・単においしいメニューだけを追い求めてしまいます。そうなると失敗の確率も上がります。
その新規事業の、KSFはなんでしょうか?しっかり分析して理解しましょう。
自社の強みを活かせていない・理解していない
新規事業を立ち上げる時多いのが、「新しいコト・今までと違うコトをしたい」といった考え方です。これは、自分の強みを全く活かせない可能性があります。
自分・自社の強みを活かさないで成功することも不可能ではありません。しかし、強みを活かさないという事は本当の0から始めることになります。成功した時のリターンは大きいかもしれませんが、成功確率は格段に落ちてしまいます。
自社の強みという点は、具体的に考えましょう。
例えばWebサイトの集客力が強みだとしても、広告集客・SEOと言われる検索対策・SNS集客など色々種類があります。またビジネスサイトの集客と、採用マーケティングという人材を集める集客方法では根本的にルールが異なります。
髪を切るのが得意という場合も、床屋と美容室ではスキルが全く異なります。 自社の強みを具体的に理解しましょう。
市場分析など準備不足
新規事業を立ち上げる時は、ワクワクや期待・自分が考えた企画を愛するあまり市場分析がおろそかになります。
新規事業で良く出るワードが「やってみないとわからないから、これ以上調べてもしょうがない」です。
確かにその通りです。しかしボールを投げて的に当てる時、当たるかどうかは投げて見なければわからないと言って目をつぶって投げる人はいませんよね。
当てるためには、的がどこにあってどのくらい離れているか、感覚ベースでも分析したうえで狙って投げます。
新規事業に参入する際は、売上を上げるための的(ターゲット)がどこにいて、どのようにボールを投げたら当たるか検討出来てから始めましょう。
具体的に市場分析をする場合は、下記のような場所から確認できます。
- 同業界で上場している企業のIR情報
- 新聞・ネット記事などの媒体
- 業界・市場分析されている雑誌「業界地図」など
- 人口統計など統計情報
- 業界で出されている白書など
過去の成功体験から、過度な自信を持ってしまう
冒頭でも説明した通り、新規事業は既存事業と求められるスキルが異なります。しかし、既存事業で成功した体験から過度な自信を持ってしまう事があります。
- 俺はアイデアマンだから新規事業も大丈夫
- 既存事業でこんなに成果が出ているか新規事業も余裕
こんな発言・考えをしてしまっていたら危険です。
新規事業を立ち上げる時は「まったくやったことがないスポーツでプロと戦って勝つこと」にも近いです。過度な自信を持ってしまわないように気を付けましょう。
市場に参入するタイミングを間違ってしまう
新規事業は、新たな市場に参入するか、新たな市場を作り出すという事です。
そのどちらも、タイミングが重要です。
iphoneが売れたのもパソコンが一般的に普及していて、電話を携帯するという習慣が身についていたタイミングだからこそです。突然江戸時代にiphoneが登場してきたら、ここまでの浸透にはならなかったでしょう。
現に、iphoneが登場する前にもスマートフォンに近しい商品はいくつもありました。上手くいったか行かなかったかは、マーケティング力もありますがタイミングが大きな要因でしょう。
特にプロダクトライフサイクルがどこにあるかは意識しましょう。下記の記事にて紹介しています。
【プロダクトライフサイクルとは】どんなビジネスも、いつかは枯れる。
全ての生き物が、成長し大人になり老いていく。ビジネスも同じく誕生から成長、そして衰退という流れを追っていきます。 その流れをフレームワーク化したものが、「プロダクトライフサイクル」です。今回は、そのマ ...
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新規事業で失敗する、経営的な理由とは
コスト管理が出来ていない
新規事業を成功させるためには、適切なコスト管理が必要ですが、失敗するケースは非常に多いです。良くある失敗は2つ。
コストをかけすぎてしまう失敗
コストをかけすぎて、限界利益が高くなってしまい採算が合わなくなってしまうパターンです。
- お客がいないのに、従業員を多く雇ってしまう。
- 高性能・最新の機材を投入してしまう。
- 店舗を大きくしすぎてしまう。内装にお金をかけすぎてしまう。
- エクセルで十分なのに、業務ツールをどんどん入れてしまう。
コストをかけなさすぎる失敗
飲食店などは過度な装飾は必ずしも必要ありませんが、汚いのも問題です。
コストをかけなさ過ぎて、顧客の満足度を下げてしまう。あるいは何でも手作業・紙としすぎてしまい、事務的な作業が増え、売上を上げるための業務がおろそかになってしまうという事もあります。
ポイントは、適切なコスト管理をすること
業種・市場・状況によって何が適切か異なるため、一律で紹介することはできません。
大きな考え方は、コストは最小限に抑えつつ、売上を上げるためのコストは惜しまないという事です。
広告費を正しく投下できていない
新規事業で失敗する例が、広告費が少なすぎるパターンです。
売上が下がったときに削減しやすいのが広告費。しかし、売上を上げるために欠かせないのも広告費です。
新規事業立ち上げ時は顧客が来ない為、不安になり広告費を下げてしまいます。
そうすると、さらに顧客が来なく時間だけ立ち、人件費・家賃などの固定がどんどん流出してしまいます。 まずは、どっと広告費を投下し、認知度を上げ顧客を付けることが最優先です。
適切な広告比率の目安を知るには、同事業を行っている企業のIR情報を見ればどの程度広告をかけているのかが分かります。その比率を見て、目標の売上高に合う広告費を投入することが大切です。
既存事業とのバランスが取れていない・社内政治問題
規事業を立ち上げるという事は、事業が安定した収益化を達成するまでは、既存事業のスネをかじるという事です。
そのために、既存事業とのバランスの問題で社内政治問題が起きたり、新規事業へのリソース配分があやふやになりやすくなります。
- 既存事業メンバーから、新規事業に対しての不信感が出る
- 新規事業メンバーに対して既存事業の仕事を依頼してしまう
- 既存事業が気になり、新規事業が手薄になってしまう。
何のために新規事業が必要なのか、新規事業はどこまで本気なのか経営者など責任者が繰り返し従業員に伝えることが大切です。
新規事業で成功に近づくための方法
ここまでお伝えした失敗する要因を、ハブいていけば失敗しない確率が上がります。 更に新規事業を成功に近づけるための方法をご紹介します。
何かで一番を取る事
新規事業は何かしらで一番を取ると拡大しやすくなります。
何かしらというのは、小さな市場・ある商品単体でのシェア・ある地域に特化してシェア1位などです。
「日本一高い山は知っているけど2番目の山は知らない。」という状況があるように、シェア2位と1位では大きく異なります。
小さなことで良いので1番を獲得し、そのうえで範囲を広げていくようにすることが大切です。
その新規事業で絶対1位を奪えるものはなんでしょうか?
スモールスタートを目指すこと
繰り返しになりますが、新規事業は失敗がつきものです。失敗しない方法をお伝えしましたが、それでも失敗はするものです。
死亡前死因分析をすること
新規事業立ち上げる時は、今の企画で行って失敗したとしたら何が原因になるだろう?
というように、死亡前死因分析をしましょう。
死亡前死因分析とは、死亡する前から自分が死ぬ場合の理由を考えるという分析方法です。
新規事業立ち上げた時から失敗するとしたら何が原因かを考えることで、早期に失敗しやすい要因を取り除くことが出来ます。
新規事業メンバーは慎重に選抜すること
新規事業は、何が正解かやってみなければわかりません。今までのポイントを注意したうえで、小さく早く進めることが大切です。
その為には、メンバー内で価値観が大きくずれていて対立ばかりすることは危険です。また新規事業は苦しいことも多いので、新規事業を心からやりたいと思っている人ではないと失敗する確率が上がります。
新規事業をやりたくて、価値観があっている人を集めて行うとよいでしょう。
新規事業を失敗しないためのチェックリスト
ここまでのポイントをチェックリスト化します。今新規事業を行おうとしている方は、下記の項目をチェックしてみてください。
- 事業のKSF。成功要因は明確に見えていますか?
- 自社の強みは理解していますか?
- 自社の強みを活かせる事業内容になっていますか?
- 市場分析はしっかり行えていますか?楽観的になっていませんか?
- 新規事業と既存事業は別物という事を忘れていませんか?
- 過去の成功体験から、自信過剰になっていませんか?
- 市場に参入するタイミングは今ですか?早くないですか?遅くないですか?
- コスト管理は適切ですか?無駄な投資はしていませんか?
- 広告費はしっかり消化していますか?守りに入りすぎていませんか?
- 社内には新規事業をやる理由を明確に伝えていますか?