
広告費は、売上の30%程度に抑える
今までのビジネスにおいては、全体の売上から比率や、1商品ごと・1利用ごとの売上からの比率によって決めるという事は多かったと思います。
例えば、100円のジュースを1つ販売するのに広告費は30円程度に抑えるなどです。
しかし、現代は1商品いくらのような単純なビジネスモデルではないサービスが増えました。
また、1人1回しか購入しないという事は、ほとんどありません。ジュースでも認知してもらい、気に入ってもらえれば定期的に購入してもらえます。
このような状態においては、1つの商品・1利用ごとの売上から広告費=顧客の獲得費用を算出するのは得策とは言えません。
そこで登場するのがLTVです。1人が生涯にその商品をどれぐらい利用してもらえるかをベースに考えるという事です。
現代のマーケティングにおいては、必須の知識であり、重要な指標の1つです。
既にご存じの方は復習程度に、初めて知るという方はしっかり覚えて置きましょう。
LTVとは?
LTVとは、Life Time Value(ライフタイムバリュー)の頭文字を取ったものです。
日本語にすると「顧客生涯価値」と呼びます。
ある顧客が、生涯においてそのサービス・会社においてどれぐらいの収益をもたらすかを表したものです。
公式にすると下記のようになります。
平均購入単価 × 購入頻度 × 利用期間 =LTV
例えば、Aさんは、高校受験の学習塾に中学1年生の4月から中学3年の3月まで、36カ月間通い続けるとします。1カ月の月謝が1万円だとすると、Aさんのライフタイムバリューは36万円となります。
Bさんは、1年間しか通わなければ、BさんのLTVは12万円です。
極端ですが、この2名しかいない塾だとすると、塾としてのLTVは24万円です。
- 平均購入単価:1万円
- 購入頻度:月1回
- 平均利用期間:24カ月
- 1万円×1回×24カ月=24万円
つまり、24万円の家電などの商品を売れるのと、この塾で1名加入するのでは売上は同じという事です。
LTVを算出することで、1人獲得した時の売上が見える為、予算配分をしやすくなります。
LTVで考えたい集客コスト
LTVを出す目的の1つは、集客コストを適切に考える事です。 集客コストは下記のような式に当てはまります。
LTV × 粗利率(売上―原価) ― 利益額(売上 × 得たい利益率) = 集客コスト
学習塾の例で、LTVが24万円だった場合で、1人当たりの家賃・人件費などコストが16万円だったとします。
この場合、LTV―コストは、8万円です。
利益を出すためには、1人当たりの集客コストは8万円未満にする必要があります。
逆に言うと、月1万円の学習塾ですが、集客コストは8万円未満なので7か月分の売上まで出せるという事です。
計算しないで、集客単価7万円というと非常に高く感じて投資するのが難しくなる額です。
もちろん、集客単価を1円でも多く抑えられる方が良いですが、抑えすぎて生徒が集まらず利益が増えないというのは良くありません。
適切な集客コストを設定し、利益を最大化する事こそがLTVの重要な目的です。
LTVが効果を発揮するビジネスモデルがある
LTVは、どの事業においても使える指標ですが、特に効果を発揮するビジネスモデルがあります。
- 定期課金制のサービス
月〇〇円など、解約するまで定期的に収益が発生するビジネスモデルです。サブスクリプションモデルと言われることもあります。 - 従量課金型のサービス
水・ガス・水道・電気といったインフラにもみられる、使った分だけ費用が増えていくビジネスモデル。
LTVにおいては、飲食業界・小売業界なども一種の従量課金型サービスとも言えます。 - フリーミアムモデルのサービス
スマホゲームなどのアプリによくみられるビジネスモデルです。
最初や、基本の利用は無料で使えるが、一定レベルを超えた利用をするためには課金をしなければいけないものです。
これらに共通するものは、1人当たりの売上は、LTV以外での算出が難しいという事です。
LTVを算出することで、1人顧客を獲得すると、どれぐらいの売上になるのかを理解する事が出来ます。
また、1人当たりの利用期間・利用回数を理解する事が出来ます。
高校受験の学習塾で、平均利用期間が3か月であるとしたらサービスに何か課題があるかもしれません。
1人当たりの売上を高めるための施策を考える為の指標にもつながります。
LTVを高めていくために考える3つのポイント
- 平均購入単価を増やす
- 利用頻度を増やす
- 平均利用期間を延ばす
平均購入単価を増やす
- 一緒に買ってもらう商品を増やす
- 一緒に頼んでもらうメニュー・サービスを増やす
- 高いプランを契約してもらう
等で増やす事が出来ます。
例えば、学習塾であれば個別授業・特別講習などのプランにて月当たりの売上を増やすという事が出来ます。
アップセル・クロスセルという考え方が大切です。下記にて紹介しています。
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【アップセルとクロスセルとは】売上を高めるための、社会人必須知識を解説
アップセルのために…。 クロスセルを高めるための施策を考えよう! という話、理解できますでしょうか? 売上は「顧客の数 × 客単価 × 購入回数」の3つの掛け合わせです。 アップセル・クロスセルは、そ ...
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利用頻度を増やす
月1回のサービスであれば難しいですが、飲食店なら毎日食べても飽きないような味付けにして来店頻度を増やすという事や、消費する商品であれば定期購入などを促すなどで利用頻度を増やす事も考えられます。
平均利用期間を延ばす
LTVを利用する上での一番重要なポイントが「平均利用期間」とも言えるでしょう。
LTVが適しているビジネスモデルは、利用期間の長さと売上は、比例関係にあるからです。
そして、利用期間が長いという事は、そのサービスに対しての顧客満足度が高いという証明にもなります。
平均利用期間を高めていくためには、とにかくサービスの質を高める必要があります。
質と言っても、単にクオリティを高めるのではなく、顧客にとって辞めたくない・契約し続けるメリットがあるサービスにするという事です。
例えば、歯医者であれば高いクオリティで、痛みなく虫歯を治すという事は良いサービスですが、継続的に利用してもらえるかは分かりません。
歯をキレイに保つための、定期健診・定期サービスなどを提供する事によって、毎月通いたい・定期的に長く通ってもらえるかもしれません。
LTVは、変動するという事を忘れないように
気を付けなければいけないのは、平均の1人当たりのLTVであっても常に変動するという事を意識しておく事が重要です。
LTVは約束された売上ではありません。
過去において平均どれぐらい利用してもらえたという指標に過ぎません。
未来において、同じLTVになるかは分かりません。
今回ご紹介した集客コストの算出では、利益のギリギリまで広告費を出せるという説明をしました。
理論上はそうですが、未曽有の出来事が発生すれば、一斉の退会・利用停止などが起きかけた広告費を回収できない可能性も十分に考えられます。
PEST分析など日々の情報を察知しながら、LTVの指標を踏まえて、適切な広告費を決めていく事が大切です。
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